Windgraph

タイプCプリント、カラーネガフィルム(120)にて撮影
風は不可視で常に変化する不確実な存在である。その見えない風を視覚的な写真として捉える試みを行なう。繰り返される戦争、災害など社会的に不安定な現代において、不可視の存在である風を可視化することは、見えない未来を切り開くための「想像力」の昇華へとつながる。

この作品は風見鶏のように風上を捉え続ける三脚を制作し、その上にピンホールカメラを乗せて8分19秒かけて露光、撮影を行う。露光している間、カメラは常に風上を向き、光を捉え続けフィルムに像として風を可視化する。8分19秒という時間は太陽で光が生まれ、地上に届くまでの時間である。
撮影にはデジタルカメラではなくフィルムカメラを用いる。デジタルという不可視であり実在しないものを媒介させずに、光を物質として変換し捉えるフィルムを利用する。これは風という不可視な存在を可視化、物質化する上で重要なプロセスである。またプリントプロセスもデジタルデータを介したインクジェット出力を避けるために従来のカラー印画紙を利用したアナログ的な暗室作業を行い、銀塩プリントを自らの手で行う。