(Iceland / 2025) インスタントフィルム、紙、LED
風は不可視で常に変化する不確実な存在である。その見えない風を視覚的な写真として捉える試みを行なう。繰り返される戦争、災害など社会的に不安定な現代において、不可視の存在である風を可視化することは、見えない未来を切り開くための「想像力」の昇華へとつながる。
この作品は風見鶏のように風上を捉え続ける三脚を制作し、その上にピンホールカメラを乗せて8分19秒かけて露光、撮影を行う。露光している間、カメラは常に風上を向き、光を捉え続けフィルムに像として風を可視化する。8分19秒という時間は太陽で光が生まれ、地上に届くまでの時間である。
撮影にはデジタルカメラではなくフィルムカメラを用いる。デジタルという不可視であり実在しないものを媒介させずに、光を物質として変換し捉えるフィルムを利用する。これは風という不可視な存在を可視化、物質化する上で重要なプロセスである。
今回、アイスランでの活動の序章として、Windgraphカメラを分解して持ち運べるようにリメイクした。また、従来は中判ピンホールカメラにて撮影をしていたが、今回は自作したピンホールカメラを用いてインスタントフィルム利用した撮影を試みた。
1839年にフランスのルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが発表した初期の写真「ダゲレオタイプ」のように、光をそのまま印画紙に焼き付ける方法である。複製のできない1点の印画紙へと集められた光は、風という「一瞬」の出来事可視化する。
また、インスタントフィルムの10cm×6cmという小さい印画面を逆に利用し、「風の見方を探る」という行為を通して人と実像がどのように向き合うか実験的な試みを行う。


